次世代音楽配信サービス『Spotify』が日本上陸間近らしいので少し考えてみる
どうも、日曜日ですがこんにちわんばんこ、増子です。
どうやら音楽配信サービス『Spotify』がいよいよ日本にもやってくるとか来ないとかってニュースになっているようですね!ということで、今回はこの『Spotify』というサービスの内容と、それが日本の音楽シーンにどんな影響をもたらしそうなのか、僕なりに考えてみます。
『Spotify』ってどんなサービス?
『Spotify』というのは、一言で言えば音楽ストリーミング配信サービスです。現在50を超える国で利用することが可能になっており、2006年にスウェーデンで発足後わずか1年半の間にヨーロッパで800万人超の顧客を獲得、2013年現在、2,000万人を超えるユーザーをもつ世界最大手のサービスとなっています。
このサービス、なぜここまで人気が出たのでしょうか?
Spotifyの特徴
この音楽ストリーミング配信サービスの最大の特徴は、なんといっても提供楽曲の数にあります。なんと1500万曲以上の楽曲を聴くことが可能なのです。しかも、無制限に。そしてさらに、無料会員でも半年間は制限なし。その後もひと月約500円程度で好き放題曲を聴けるというサービスになっているのです。
facebookやTwitterといったSNSを通して曲の共有も簡単にできてしまいます。その他、楽曲検索、プレイリストの作成、シャッフルプレイ等、基本的な操作ももちろん可能。なんと素晴らしいサービスでしょうか。もちろん、提供される楽曲はすべてオリジナル音源で一曲丸々楽しむことができます。
ではこんな素晴らしいサービスが、なぜ今まで日本に上陸していなかったのでしょうか?
日本に上陸していなかった理由
どうやら日本に上陸できていなかった理由として一番大きいのは、Spotifyの株主である四大メジャー(ユニヴァーサル・ミュージック・グループ、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ワーナー・ミュージック・グループ、EMI)の影響力が日本では低いから、だそうです。日本での四大メジャーのシェアは約3.5割程度で、日本においてこのサービスを推進しづらい状況にあると。したがって中々日本の音楽シーンに参入していくことができなかったのですね。
ではこの『Spotify』がもたらす変化を考えてみることにします。
『Spotify』の日本上陸によってどんな変化が起こるのか?
海賊版や違法ダウンロードの減少
まず、すでにサービスが利用可能な地域で起こった、海賊版や違法ダウンロードの減少という効果が日本でも期待できると考えます。これまでCDやiTunesで曲を買うのにお金をかけたくないと思っていた人たちが、公式に、それも無料で曲が聴けるとなれば、リスクを犯して海賊版を買ったり違法ダウンロードをすることはなくなるはずです。しかも利用可能楽曲数は1500万ですから、相当な広い範囲をカバーできるはずです。
CD、iTunesの売上が減少する
これは当然の結果でしょう。すでにiTunesやYouTubeなどの影響で売上が減少しているCDですが、Spotifyの登場によってさらに危機的な状況になる可能性は十分にあります。また、iTunesも安心してはいられません。CDより安く楽曲を購入できるiTunesも、無料のサービスが登場してしまってはユーザーを持っていかれることになるでしょう。
アーティストの収入が減る
例えば、アメリカの有名バンド「メタリカ」は、Spotifyに楽曲提供を開始してから、アルバムの売上が約35%落ちたとしています。収入やCD売上減少の懸念から、ザ・ビートルズ、AC/DC、レッド・ツェッペリン、キング・クリムゾンなども、サービスへの音源提供を拒んでいるという状況になっています。このようなメジャーアーティストであっても売上減少を訴えているのですから、これが新人アーティストであればなおさらのことです。ただでさえCDが売れずに音楽での成功が難しくなっている時代に、このサービスが音楽家にもたらすマイナスの影響も大きいのではないでしょうか。
音楽の質が落ちる
音楽の質、というと中々議論が難しいところでありますがあえて言及します。つまり、アーティストが膨大な時間やエネルギー、そして制作費をかけた作品が無料で聴けてしまうということは、聴き手がその想いを汲み取りづらくなる、もしくはそういった過程に敬意を払うことが全くなくなってしまうという可能性を孕んでいます。
「音楽の使い捨て」的な状況がさらに加速することになりかねないという意味です。例えば、駅で配られるフリーペーパーのようなものです。お金を出して買った本であれば、その対価に見合うだけの情報や感動をその本から吸収しようと務めるでしょうが、無料となれば話は別です。暇つぶしに手に取って、読み流して捨てる。それが音楽という一つの芸術の分野で起ころうとしているのです。
いくら情熱を注いでも、聴き手がそれを汲み取ろうとしないのでは、作る価値がありません。結果として、今以上に軽薄な音楽がシーンにあふれる可能性があります。
音楽が再びニッチなものに戻る
しかし、逆にこうも考えられます。音楽というのは元々は今ほど一般的なものではなく、もっとニッチなところに存在していたものでした。それが、様々なメディアや記録媒体によってしだいに一般化され、だれでも気軽に音楽に触れることが出来るようになった。その最終形態が、音楽の無料配信サービスです。
その中では、周りの流行に関係なく自分の好きな音楽を好きなだけ聴くことができます。つまり、本当にそのジャンルが好きな人のみがそのジャンルを聴く、ということが起こりえます。ですから、一つ一つの音楽の分野が、一般受けを狙う必要がなくなり、より深く突き詰めた表現を探ることが出来るようになるということです。これは表現者としてもリスナーとしても歓迎すべき環境であると言えます。
音楽ビジネスの新たなモデルが提案されるべき時
こうなってくると、CDの売上で利益を得ようとするこれまでのモデルは通用しません。CDを如何に売るか、ということを考える時代はすでに終わったと言ってもいいでしょう。これから音楽業界に求められるのは、現在のモデルを脱却し、新たなモデルを考えそれを早急に適応することです。今や個々人で音源のリリースが手軽に行える時代。プロモーションなしでも、多くのファンを獲得できる時代です。その中で音楽プロダクションの存在意義は何なのか。そろそろ本気で考えないと、いつまでも「日本の音楽業界は終わってる」なんて言われてしまいますよ。
おわりに
次々に新たなサービスが登場して、音楽を取り巻く環境は変化していきます。確かに無料でサービスを受けられるというのは素晴らしいことかも知れませんし、僕も100%利用します。しかし大事なのは、どんな環境になろうとも、僕らがその音楽に対して、またアーティストに対して敬意を払うということではないでしょうか。彼らがいなくては、僕らは素敵な音楽に出会えないのですから。
そいうった気持ちを忘れずに、これからも音楽を楽しみたいものです。